今回の作品を作曲するにあたり、どのようなタイトルにするかを大変悩みました。平野区にある“音風景”を音楽にすることは決めていたのですが、肝心のタイトルがなかなか見つかりませんでした。

そんな中、ふと思い出したのが、以前に連れて行っていただいた「志紀長吉神社」で見た、真田幸村に関する資料でした。六文銭を描いた軍旗が非常に興味深く、見入った記憶があります。そこに絵巻物が一緒にあった――ような?なかったような……。「ん? 絵巻物!?」と思い立った瞬間、平野の歴史が絵巻物のように広がっていくイメージが頭に浮かんできたのです。

過去の自分が書き留めたメモを見返してみると──

12月5日
「平野は続くよどこまでも」
平野大絵巻

という文字を発見しました。これが最初の案だったと思います。当初は「平野大絵巻」と語順が異なっていました。その後、「大きいのは絵巻ではなく、平野そのものだ」と考えに至り、現在の『大平野絵巻』というタイトルに落ち着いたことを、はっきりと覚えています。

ちなみに、「平野は続くよどこまでも」というコンサートの副題も、比較的早い段階で決めていました。「“へいや”と読まれてしまわないか?」というご指摘もありましたが、むしろ「へいや(平らな大地)」は「平野」の名前の由来のひとつでもあります。ですから、読み手が自由に受け取ってもらえれば良いと考えました。

『大平野絵巻』というタイトルが決定し、「ファンファーレと序奏」のスケッチができた頃には、まだ交響的な形式で楽章を設ける予定はありませんでした。ただし、断片的に「河内音頭」や「だんじり囃子」など、具体的な音を楽曲に取り入れることは決めていたため、当初は組曲のような形になるのではとも思っていました。

しかし、それぞれの曲が独立してしまうと「絵巻物」にはならないと考え、楽章ごとに分けることはしないと決めました。

「交響的譚詩(たんし)」という言葉を副題に添えたのは、本当に制作の最終段階に入ってからのことです。「交響詩」という言葉も候補に浮かびましたが、一つの物語にはなり得ないため、それは使えないと思いました。楽章形式にし、楽章をまたぐモチーフを取り入れた時点で、交響曲的な要素が強くなってはいましたが、それぞれの楽章にはそれぞれの物語があるので、「譚詩」という語を選びました。

「譚詩(たんし)」とは、「物語(=譚)」と「詩(=詩的表現)」をあわせ持つ言葉です。英語では「バラッド(ballad)」と訳されることもあり、もともとは「踊り歌」という意味を持ち、物語性のある詩、民謡・伝承歌のことも指します。これはまさに、『大平野絵巻』にぴったりだと感じ、タイトルに取り入れることにしたのです。

こうして、『交響的譚詩《大平野絵巻》』というタイトルが完成しました。